
「TOEICは大学入試に使えなくなった」という話を聞いたことがある高校生や保護者は少なくない。一方でGTECは高校の授業内で受けさせられる学校も多く、受験生にとって身近な存在になっている。この2つの試験、実際に大学入試でどちらがどれだけ使われているのか、公式データで比較すると意外な実態が見えてくる。
TOEICとGTECは別物 — まず測るものが違う
GTECはベネッセコーポレーションが運営し、Reading・Listening・Writing・Speakingの4技能を1回の受験でまとめて測定する。主な受験者層は高校生で、学校単位での団体受験が中心になる。一方TOEICはIIBCが運営し、L&R(Listening&Reading)とS&W(Speaking&Writing)が別建ての試験になっている。大学生・社会人の受験が中心だが、高校生の受験者も一定数いる。
この設計の違いが、大学入試での使われ方の違いにそのまま反映される。GTECは学校側が「4技能を一括で見る」目的で導入しやすく、TOEICは個人受験のスコアを持参して出願要件や加点に使う形が中心になる。

採用校数を公式データで比較する
IIBCが公表する「TOEIC Program大学入学試験における活用状況(2025年度)」によれば、全国786校を調査したうち390校がTOEIC Programを何らかの形で活用している。内訳はTOEIC L&Rが388校、TOEIC S&Wが300校、L&R+S&Wの4技能セットが250校、TOEIC Bridge Testsが84校となっている(IIBC公式データより)。
一方ベネッセの公式サイトでは、GTECは「全国500以上の大学・短大の入試で活用できる」と案内されている(ベネッセ公式サイトより)。単純な採用校数だけを見ればGTECの方が多いが、これは団体受験のしやすさと、高校の授業内で受験機会が用意されている構造上の違いが大きい。
| 項目 | TOEIC | GTEC |
|---|---|---|
| 運営団体 | IIBC(国際ビジネスコミュニケーション協会) | ベネッセコーポレーション |
| 測定技能 | L&R(2技能)とS&W(2技能)は別試験 | 4技能を1回の受験でまとめて測定 |
| 主な受験者層 | 大学生・社会人が中心、高校生も一定数 | 高校生が中心、学校単位の団体受験が多い |
| 大学入試での活用校数 | 390校/786校調査(2025年度・IIBC公式データ) | 500校以上(ベネッセ公式サイト) |
「大学入試英語成績提供システム」との混同に注意
「TOEICはもう大学受験で使えない」という誤解の出どころは、2019年度に導入予定だった文部科学省の「大学入試英語成績提供システム」だ。TOEICはL&RとS&Wが別試験である運用上の複雑さを理由にこの共通システムへの参加を辞退し、システム自体も2020年に導入見送り、2021年に正式廃止となった。
ここで混同してはいけないのは、「文科省の共通システムに参加しなかったこと」と「各大学が個別に実施する入試でTOEICを使えるかどうか」は別の話だという点だ。共通システムは廃止されたが、各大学が独自に行う推薦入試・AO入試・一般入試での得点換算・出願資格・加点措置としてのTOEIC活用は、前述の通り2025年度時点で390校が続けている。

高校生はどちらを優先すべきか — 進路パターン別の考え方
学校でGTECの受験が必修化されている場合、まずはその結果を素直に活用するのが効率的だ。学校側がすでに受験料や日程を用意しているものを追加でTOEICに置き換える必要はない。判断が必要になるのは次のようなケースだ。
- 志望校がTOEICの活用実績を明示している場合 — 出願要項に「TOEIC◯点以上で加点」等の記載があれば、GTECと並行してTOEICも受けておく価値がある
- 推薦・AO入試で英語力を客観的に示したい場合 — TOEICは何度でも個人受験でき、スコアの更新がしやすい。学校のGTEC受験機会が限られている場合の補完になる
- 大学進学後も英語資格を使い続ける予定がある場合 — 就職活動や資格要件でTOEICスコアを求められる場面は多い。高校生のうちから慣れておく意味は大きい

どちらか一方を選ぶ必要はない。学校のGTEC受験を土台にしつつ、志望校の要項次第でTOEICを追加するという併用の発想が現実的だ。まずはレベル診断で今の実力を把握してから、追加受験の必要性を判断するとよい。
大学受験を見据えたTOEICのスコア設計はTOEICスコア別ロードマップで体系的に整理している。
関連記事
スコアアップ
TOEIC・英検・CEFR換算表【公式準拠】英検2級は何点相当?
TOEICと英検・CEFRの対応をIIBC公式データで整理。英検2級(B1)保有者はTOEIC550〜600点台が目安、英検準1級(B2)相当はTOEIC730点水準。スコア目標を設計する換算早見表つき。
攻略のコツ
TOEICと英検どちらを受けるべき?用途別に選ぶ3基準
TOEICと英検の選び方:転職・昇格ならTOEIC(7,810円)、大学受験・資格なら英検(2級9,100円)、留学ならIELTS/TOEFL。測定内容・合否基準・受験頻度の違いを用途別比較表で整理する。
スコア活用
TOEIC 高校生の目標スコアと受験・進学の目安
高校生がTOEICを受験する目的(大学入試・推薦・英語力の客観指標)に応じた目標スコアを解説。高校生の平均は約500〜550点で、推薦入試に有利な600点・700点を目指す効率的な学習戦略と受験タイミングを示す。
学習戦略
中学生が TOEIC を受験する意味 — メリット・目標スコア・学習の進め方
中学生の TOEIC 受験は高校・大学受験のアドバンテージになり得る。目標スコアの目安は 400〜500 点。学校英語との両立方法と、早期受験が有効に機能する条件・逆効果になるケースを解説する。
勉強法
TOEIC スコア別ロードマップ|600/730/800/900点
TOEIC 600〜900点を目指す全スコア帯に対応したロードマップ。IIBC統計データをもとに、各目標スコアの必要学習時間・Part別優先度・停滞期打開策・模試サイクルを体系化したピラーガイド。