
2024年、65歳以上の就業者数は930万人に達した。2004年以降21年連続の増加で、比較可能な1968年以降の過去最多。就業者総数に占める割合も13.7%と過去最高を更新している(総務省統計局「労働力調査」基本集計、2025年9月公表の統計トピックスNo.146)。「定年後は引退する」という前提そのものが、統計の上ではすでに崩れている。
この変化を後押ししているのが、2021年4月に施行された改正高年齢者雇用安定法だ。企業には70歳までの就業機会確保が努力義務として課され、定年引き上げ・定年廃止・継続雇用制度の導入・業務委託契約の締結・社会貢献事業への従事という5つの選択肢のいずれかを講じるよう求められている(厚生労働省)。義務ではなく努力義務——つまり70歳まで働けるかどうかは会社の裁量に委ねられる部分が大きく、本人の側にも「働き続けられる根拠」を示す材料が必要になる場面が増えている。TOEICの学び直しを、この文脈で考えてみる。
65〜69歳の就業率は53.6%、70〜74歳は35.1%
総務省統計局のデータをもう少し詳しく見る。2024年の65歳以上の就業率は25.7%(前年比+0.5ポイント)。年齢階級別では65〜69歳が53.6%、70〜74歳が35.1%、75歳以上が12.0%で、いずれも過去最高を記録した。10年前の2014年と比較すると、65〜69歳は+13.5ポイント、70〜74歳は+11.1ポイント、75歳以上でも+3.9ポイント上昇している。
| 年齢階級 | 2024年就業率 | 10年前(2014年)比 |
|---|---|---|
| 65〜69歳 | 53.6% | +13.5ポイント |
| 70〜74歳 | 35.1% | +11.1ポイント |
| 75歳以上 | 12.0% | +3.9ポイント |
(出所: 総務省統計局「労働力調査」基本集計、統計トピックスNo.146「統計からみた我が国の高齢者」2025年9月)

「60代のTOEIC平均点」という数字は公式には存在しない
ここで誤解を避けておきたい点がある。IIBCが公開する「TOEIC Program DATA & ANALYSIS」には、社会人/学生別、職種別、役職別、社歴別、海外滞在経験別、学年別、受験回数別など多数の切り口の平均スコアが収録されている。しかし年代別(20代・30代・60代というような年齢の区分)の平均スコアは、公開テスト・IPテストのいずれの資料にも掲載されていない。つまり「60代の平均は何点」という数字自体、IIBC公式には存在しない。年代別のスコア比較を断定的に語る記事を見かけたら、出典の一次情報を確認したほうがいい。
「60代は20代より平均点が高い」という主張も「60代は20代より低い」という主張も、少なくとも日本のIIBC公式データからは検証できない。年齢を軸にした比較そのものが、公式には答えの出ない問いになっている。
年齢で比較できないなら、何を指標にすればいいか
年代別の公式ベンチマークがない以上、60代の学習者が目安にすべきは「自分がどの職務・契約形態を目指すか」という基準だ。継続雇用制度での契約更新、業務委託契約への切り替え、あるいは社会貢献事業への参加——高年齢者雇用安定法が挙げる5つの選択肢は、いずれも会社側の裁量が大きい。契約更新や条件交渉の場面で、英語力を客観的な形で示せる材料を持っているかどうかは、無視できない差になりうる。

数十年分の業務知識は、単語帳の1周より強い
60代の学習者に共通する資産は、数十年分の業務経験の中で触れてきた英語表現の蓄積だ。invoice(請求書)、procurement(調達)、quarterly report(四半期報告)といった語は、業務で一度でも扱ったことがあれば、単語帳を1周する暗記より定着が速い。Part5・Part7のビジネス文書は、こうした実務知識がそのままスコアに変換されやすい領域になる。年齢を重ねたからこそ有利な領域から着手するのが、限られた学習時間を最も効率よく使う順序だ。40代・50代の学習設計の考え方は40代・50代からのTOEICやり直しで扱っており、60代でもそのまま応用できる部分が多い。

最初の一歩は模試で現在地を測ること
年齢別の公式ベンチマークがない以上、比較すべき相手は「他の60代」ではなく「今の自分」だ。まずはリスニング模試・リーディング模試の両方で現在地を測り、契約更新や業務委託契約で示したいスコアまでの距離を確認するところから始めるのが現実的だ。無料のレベル診断はこちらで受けられる。30代からの学習設計は30代からのTOEICやり直し戦略、日本人全体の平均スコアとの比較はTOEIC日本人平均スコアで扱っている。
