
2025年の訪日外客数は4268万3600人。前年より15.8%増え、これまで過去最高だった2024年の3687万148人を大きく上回った(JNTO「訪日外客数(2025年12月推計値)」)。訪日外国人旅行消費額も約9.5兆円に達し、前年比+16%、コロナ前の2019年(約4.8兆円)のほぼ2倍という水準になっている(観光庁)。この伸びは、ホテル・観光業界で英語力をどう測っているかを見直す材料になる。
フロント配属には730点、600点取得者には受験費補助 ― ホテルオークラ神戸の事例
IIBCが公式サイトで公開している活用事例の中に、株式会社ホテルオークラ神戸のケースがある(2023年8月取材)。同社は2017年からTOEIC L&R IPテストを導入し、2018〜2019年と継続実施。コロナ禍の2020年に一時中断したが、2023年度に新入社員研修を再開し、TOEIC Bridge L&R IPテストも初めて実施した。
基準として明示されているのは次の2つだ。600点以上のスコアを取得した社員には受験費用の半額を会社が支給する。そして、社内で最も英語力を求められるフロント部門への配属を希望する場合は、730点程度のスコアが必要とされている。従業員数約310名のうち、2023年度の新入社員48名を対象に、入社直後の4月上旬にTOEIC Bridge L&R IPテストを実施し、レベル別の研修に振り分けている。
| 基準 | スコア |
|---|---|
| 受験費用の半額補助 | 600点以上 |
| フロント部門への配属希望 | 730点程度 |
(出所: IIBC公式サイト「TOEIC Program 活用事例」株式会社ホテルオークラ神戸、2023年8月取材)

レストランサービス19人が挑んだTOEIC Bridge ― インターコンチネンタルの事例
もう一つのIIBC公式事例が、ストリングスホテル東京インターコンチネンタルだ(2024年12月取材、2025年3月号掲載)。レストランサービススタッフの英語力強化を目的に19人を選定し、キッチンスタッフ数人も自主的に参加を申し出た。まず6ヶ月間、オンライン学習ツール「ホテルおもてなし英語講座」で学習し、続く2ヶ月間はTOEIC Bridge L&R公式教材で学習する。トレーニングマネージャーによるクラスルーム形式のフォローアップとロールプレイングも組み合わせている。
TOEIC Bridge L&Rを選んだ理由として同社が挙げたのは「日常会話に即したシーンが多く、話すペースも日常会話に近い」という点だった。フロント配属基準にTOEIC L&Rの730点を使うホテルオークラ神戸と、現場スタッフの研修効果測定にTOEIC Bridgeを使うインターコンチネンタル――同じホテル業界でも、目的によって選ぶテストの種類自体が違う。

訪日外客数はこの1年でどう伸びたか
JNTOが2026年1月に公表した推計値によると、2025年の訪日外客数は4268万3600人で、年間として初めて4000万人を突破した。国・地域別では韓国945万9600人、中国909万6300人、台湾676万3400人、米国330万6800人、香港251万7300人と続き、オーストラリアも年間として初めて100万人市場入りした(105万8300人)。コロナ前の水準を大きく超えた今、フロント・コンシェルジュ職に外国語対応力を求める動きは今後も強まりやすい。

「ホテル業界はTOEIC何点」への答えが一つでない理由
IIBCが公開する昇進・昇格の活用事例集には、建設・化学・電機・情報通信・商社など複数業種の基準(おおむね600〜720点)が並ぶが、ホテル・観光業に絞った業界横断の統一基準は示されていない。確認できた公式事例はホテルオークラ神戸とストリングスホテル東京インターコンチネンタルの2社のみで、どちらも「その企業が独自に設定した基準」であり、業界全体の相場ではない。ホテルオークラ神戸の730点(フロント配属希望者向け)は他業種の課長クラス相当(650〜700点)に近い水準だが、これを「ホテル業界の標準」と一般化するのは早計だ。
実際に目指すべき基準は、志望する企業の採用要項や研修制度を個別に確認するところから始まる。まずは自分の現在地を知ることが先決で、リスニング模試・リーディング模試の両方で実力を測っておくと、730点という基準までの距離感がつかみやすい。無料のL+R24問の総合診断でも現在地を確認できる。
接客業でのTOEIC活用は宿泊業以外にも広がっている。副業やフリーランスでの英語スキル活用は副業で英語スキルを活かす方法、転職市場全体のスコア基準は転職に必要なTOEICスコア、業界別の目安は業界別TOEICスコアの目安で扱っている。スコア設計全体の考え方はTOEICスコア別ロードマップを参照してほしい。