
「メモをどう取るか」より先に答えるべき問いがある。先読みは定着しているか。この一点が、Part 3・4 のメモ戦略の前提になる。先読みが安定していない段階でメモ術を重ねても、音声が始まった瞬間に書くことと聴くことへの注意が分裂する。メモは先読みができた上での補助であり、その逆順は機能しない。
この記事では、先読みを土台に置いたメモの取り方の方針と、設問タイプ別の有効・無効の判断基準を具体的に示す。

先読みが最優先である理由
Part 3・4 のセット構成は「会話またはトーク1本につき設問3問」だ。音声が始まる前に3問の設問と選択肢を読んでおけば、「この音声では何を聞き取ればいいか」が分かった状態で聴ける。逆に先読みなしで聴くと、音声が終わってから設問を読み始めることになり、何を聞き取るべきだったかを後から知る羽目になる。
先読みができていない状態でメモを取ろうとすると「音声を聴きながら書く」という並列処理に追われ、肝心の意味把握ができないまま時間が過ぎる。先読みの習慣化が先で、メモはその後に追加する順序が重要だ。TOEICリスニング完全攻略ガイドで先読みの段階的な練習手順を確認できる。
メモを取るべき情報のタイプ
先読みが定着した上で、メモが効く情報とそうでない情報を区別する。TOEIC Part 3・4 でメモが有効なのは「文脈から推測しにくく、音声終了後に正確に思い出す必要がある情報」に限られる。
| メモが有効な情報 | 例 | 設問との対応 |
|---|---|---|
| 数字(時刻・金額・数量) | 3 PM / $450 / 12 units | 「何時に予定しているか」「いくらか」 |
| 固有名詞(人名・会社名・地名) | Mr. Chen / Lakeside Hotel | 「誰に連絡するか」「どこに行くか」 |
| 決定・依頼事項 | call / email / reschedule | 「次に何をするか」「何を依頼されたか」 |
一方、「会話の背景・目的・全体の流れ」はメモ不要だ。先読みで設問を把握していれば、音声を聴きながら脳内で処理できる。全部書き留めようとすると過剰メモになる。

先読みとメモを連携させる3ステップ
Step 1:先読み中に「メモ対象の設問」を特定する(10〜15秒)
設問を先読みしながら「数字・固有名詞が答えになりそう」と判断できる設問に印をつけるか、設問番号の横に「?」をメモしておく。次のような設問が対象だ。
- 「What time will the meeting start?」→ 時刻をメモ
- 「How much does the upgrade cost?」→ 金額をメモ
- 「What will the man do next?」→ アクションの動詞をメモ
Step 2:音声開始後、特定した情報が出たらすぐメモする
音声が始まったら、Step 1 で特定した情報が出てきたタイミングで素早く書く。完全な単語でなく、数字・略語・記号で十分だ。
- 時刻 → 「3P」(3PM)
- 金額 → 「$450」
- アクション → 「call mgr」(call the manager)
書く場所は問題用紙の設問番号の横の余白(試験規則の範囲内)。
Step 3:音声終了後にメモを照合して解答する
音声が終わったら設問と選択肢を見て、メモした情報と照合する。「3P → (A) 3:00 P.M.」のように、メモが正答を特定する手助けになる。
例題(メモが効く数字問題)
会話の一部(聞こえてくる英文): "The shipment was supposed to arrive on Tuesday, but the supplier called to say it will now come on Thursday instead. I have already informed the warehouse team."
When will the shipment arrive?
- On Monday
- On Tuesday
- On Thursday
- On Friday
解答・解説を見る
正解: (C) On Thursday
先読みで "When will the shipment arrive?" を確認しておけば、曜日が答えになると分かる。音声では Tuesday と Thursday の2つの曜日が出るが、"now come on Thursday instead(今度は木曜に来る)" が確定情報。メモは「Tue→Thu」とだけ書けば十分。(B) Tuesday は当初予定のひっかけで、変更後の曜日に矢印を引くのがメモのコツだ。
過剰メモのリスクと見極め方
メモを取ることに集中しすぎると逆効果になる。具体的なリスクは次のとおりだ。
- 書くことに意識が向いて音声の意味把握が浅くなる
- メモを取っている間に次の情報を聞き逃す
- 書いた略語を解答時に解読できなくなる
「書きながら聴く」という状態が続くと、リスニングではなく「転写」になっている。音声の意味理解が目的であり、メモはその補助だ。書くことに気を取られて聞けなくなるなら、メモをやめて先読みと記憶だけで解く方向に戻るほうがよい。

設問タイプ別:メモが効く・効かない
メモが最も有効な設問
数字が絡む設問(時刻・金額・数量・日程)。Part 3・4 では「何時に・いくらで・何個・何日後に」という数字が答えになる設問が頻出する。数字は聞いた瞬間は分かっても、設問を解くタイミング(音声終了後)に忘れやすい。メモが最も機能する場面だ。パート別スコア改善ガイドでPart3・4の数字問題への対応法を確認できる。
3問目の「次に何をするか」系設問。「What will the man do next?」のような設問は、会話・トークの最後の部分に答えが出てくることが多い。最後の発言を聴きながら設問3を解くという処理が重なるため、「call / email / submit / reschedule」など動詞の一語メモが判断を助ける。
メモが不要・効果が薄い設問
- 「What are they mainly discussing?(主題)」→ 先読みで把握した大意で対応できる
- 「Why is the woman calling?(目的)」→ 会話の冒頭から判断できることが多い
- 「Where most likely does the conversation take place?(場所の推測)」→ 全体の文脈から判断するため局所的なメモは助けにならない

先読みが定着していない段階では、メモ術を追加しても分裂が生まれるだけだ。2〜3週間、先読みだけを意識して練習し、「音声開始前に3問全部読めている」状態を安定させることがメモ活用の前提になる。Part 3・4 の先読み戦略の詳細はTOEIC Part3・4 先読みスキルで解説している。Part 3 と Part 4 の特徴の違いはTOEIC Part3 vs Part4 比較も参照してほしい。Part3・4を含むリスニング全体の攻略はリスニング完全攻略ガイドで、メモ取りと先読みを組み合わせた総合攻略はTOEIC Part3+4完全攻略ガイドにまとめてある。
関連記事
リスニング
Part3とPart4の違いと共通の先読み解法|聴き方を整理
TOEIC Part3(会話)とPart4(独白)の違いを把握して一括攻略。IIBC公式データで形式・設問数を確認し、共通する先読み解法と聴くべき情報の探し方の違いを整理する。
リスニング
Part3/4の先読みは「5秒で3キーワード」が基本
TOEIC Part3・Part4の正答率は先読みの有無で大きく変わる。5W1Hキーワードを5秒で3つ拾う手順と、先読みが間に合わなかった場合のリカバリー法をPart3・100問/Part4・205問の構成とともに解説する。
リスニング
Part3 先読みの時間配分|Directions 30秒の活用
TOEIC Part3の先読み戦略で正答率を上げる具体的な時間配分を解説。Directions音声30秒の活用法・設問読み上げ中の並行作業優先順位・先読みが崩れる3原因と回避策を手順で示す。
リスニング
TOEIC リスニング完全攻略ガイド|Part1-4攻略と練習法
TOEIC リスニング(L495点)を伸ばしたい学習者向けの完全攻略ガイド。Part1〜4の先読み・消去法・メモ取りから、シャドーイング活用・スコア帯別練習法・直前1週間プランまで解説。
リスニング
TOEIC Part3+4 会話・説明文 完全攻略
TOEIC Part3(会話39問)・Part4(説明文30問)の完全攻略ガイド。設問先読み8秒戦略・図表問題・意図問題の解法・シャドーイング活用・スコア帯別プランをこの1記事で体系化。リスニング350点超えへの最短ルートを解説。